赤外線リモコンについて
色々な家電製品についているリモコン。みなさんも、普段から良く利用されていると思います。 でも、リモコンってどう言う原理で動作しているのでしょうか? ほんの少しですが、
赤外線リモコンについて解説したいと思います。
一般の電化製品のリモコンは、リモコン(送信機)と本体(受信機)の間で、目に見え無い光による通信が行われています。 この目に見えない光と言うのが赤外線です。
リモコンの動作を知る為には、まずこの赤外線とは何かを理解する必要があります。
赤外線とは
赤外線とは目に見えない光です。
一般に光と言うと、目に見える物とお思いになる方も多いと思いますが、光は電波やマイクロ波と同じ電磁波で、それらの波の長さ(波長)によって目に見えたり、見えなかったりします。
で、人の目で見える光を可視光線と言い、可視光線の赤の外側にある波長なので、赤外線と言います。
逆に紫の外側の波長は紫外線と言います。
赤外線はおよそ750〜1,000nmの間の波長で、400nm〜800nm位の間の波長が可視光線、 10〜400nmの間の波長が紫外線となっています。 ちなみに放射線は紫外線よりも短い波長のことを言います。
赤外線には温度を持つ物体から自然に放射されると言う特徴があり、実は目に見えないだけで、私たちの周りのあらゆる物から赤外製が発せられています。
リモコンと本体の通信
さて、リモコンではどの様な通信が行われているのでしょうか?
それはモールス信号を思い浮かべてもらうと、理解が早いでしょう。 モールス信号では文字を音の信号(長い音と短い音の組み合わせ)に変換して相手に伝えますが、リモコンでは制御信号を赤外線の点滅に変換して、リモコンから電化製品本体へ伝えられます。
この点滅のしかたには幾つかの規格がありますが、基本はPPM信号と言われる方式です。
PPM(Pulse Position Modulation)信号
PPMとはパルス位相変調信号です。なんか難しいことばですが、要は赤外線の点灯時間と消灯時間の長さの組み合わせによってビット値を表現すると言う物です。これでも難しいかな?そう言う人は下図をご覧下さい。
赤のラインが、赤外線の点灯・消灯を表しています。

この図は、単純に点灯・消灯が5回繰り返された物です。
点灯・消灯の1セットで1ビットを表しますが、最後の点灯・消灯は不完全なので、これで4ビットのデータと理解して下さい。
次にこの図をご覧下さい。

2回目と4回目に点灯した後の消灯時間が長くなっています。
消灯時間が短い部分を 0 として、消灯時間が長い部分を 1 としてデータを読むと、この図のデータは ’0101’と言うことが言えます。(最後の点灯は無視して見て下さい)
このように、点灯・消灯の1セットで1ビットを表し、点灯時間・消灯時間の長さの組み合わせによって0か1を判定する方式をPPM方式と言います。
ご理解頂けましたでしょうか?
ちなみに、いわゆる NECフォーマット(後述)では消灯時間の長さで0/1を判定する方式を採用していて、 SONYフォーマット(後述)では点灯時間の長さで0/1を判定する方式を採用しています。
NEC(家電製品協会)フォーマット
このフォーマットは、一番多くの企業が採用していて汎用性の高いフォーマットと言えます。
このフォーマットでは、前述のPPM信号にリーダー信号・ストップ信号が付加された制御信号です。
リーダー信号は、リモコンの信号が始まる事を示します。
データ信号は、制御コードをPPM信号で送信します。
ストップ信号は、リモコンの信号が終了する事を示します。
それぞれの点灯時間・消灯時間は以下の通りです。
|
点灯時間 |
消灯時間 |
リーダー信号 |
9,000μ秒 |
4,500μ秒 |
データ 0 |
560μ秒 |
560μ秒 |
データ 1 |
560μ秒 |
1,690μ秒 |
ストップ信号 |
560μ秒 |
23,000μ秒 |
この数値は大体の数値で、実際の規格と異なる場合があります。
本来のNECフォーマットでは、制御コードは32ビットだとかカスタムコードやデータコードと言った取り決めが有るようですが、いくつかのメーカーはこれを守っていませんし、説明してもあまり意味が無いと思いますので、省略致します。
リピートコードについて
NECフォーマットでは、前回と同じ制御信号を繰り返す意味のリピートコードがあります。例えばリモコン上のボタンを押し続けている間等に送信される信号です。(ボリュームアップのボタンを押し続けたり、チャンネル+を押し続けたり)
このリピートコードは、リーダー信号とストップ信号のみで編成されデータ信号は含みません。

この図の様に、リーダー・ストップ・リーダー・ストップとリピートコードは続きます。
SONYフォーマット
このフォーマットは、SONYのみが採用しているフォーマットです。SONY製品をコントロールする為には、必須のフォーマットです。
PPM信号でデータを送信しますが、NECフォーマットとは違って赤外線の点灯の時間によってビットを判定します。 リーダー信号が付加されますが、ストップ信号はありません(必要無いのですね)。
リーダー信号は、リモコンの信号が始まる事を示します。
データ信号は、制御コードをPPM信号で送信します。
ストップ信号は、リモコンの信号が終了する事を示します。
それぞれの点灯時間・消灯時間は以下の通りです。
|
点灯時間 |
消灯時間 |
リーダー信号 |
2500μ秒 |
550μ秒 |
データ 0 |
650μ秒 |
550μ秒 |
データ 1 |
1250μ秒 |
550μ秒 |
この数値は大体の数値で、実際の規格と異なる場合があります。
キャリア周波数での変調
赤外線は私たちの周りのあらゆる物から放射しています。 これらの自然に放射されている赤外線とリモコンで利用する赤外線を区別する為に、一般のリモコンでは、ある特定の周波数で変調して赤外線を発光させています。 この周波数はキャリア周波数と呼ばれていて、一部のリモコンを除いた大抵のリモコンでは38kHzが利用されています。
前述までで説明しているPPM信号では、赤外線の点灯・消灯で説明してきました。
実はこれは間違いで、赤外線の点灯状態=38kHzの速度で赤外線が点滅していると言うように、理解して頂ければ良いと思います。
リモコンの赤外線を見る方法
人間の目には見えない赤外線ですが、実は簡単に見る方法があります。 それはビデオ・カメラやデジタル・カメラを通して見る事です。 一般のビデオ・カメラやデジカメに利用されているCCDセンサーは可視光線よりも広い範囲の波長を捕らえる事が可能で、撮影された画像には赤外線も映し出される結果となります。

これは実験用のボードに赤外線LEDを接続した写真です。
これに電気を流すと↓のように撮影できました。
同じように、一般のリモコンの赤外線LEDの発光部を見てみると、 このように光っている様子が見えます。 携帯電話のデジカメでも見られるので、興味の有る方はお試し下さい。
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